投稿日:2022-02-19 Sat
国内の森林鉄道のガソリン、ディーゼル機関車というと加藤、酒井、協三、野村組など重機や機械メーカー製で、大手鉄道車両メーカー製というものはほとんど存在しません。しかし昭和初期のほんの一時期に鉄道車両メーカーの日本車輌、川崎車輌が製造したガソリン機関車が導入されています。
日本車輌初の内燃機関車は1930(昭和5)年10月製造の2軸4tガソリン機関車で、青森営林局へ納入されました。
この機関車はインサイドフレームのロッド式駆動という、森林鉄道ではあまり見ないタイプでした。
津軽森林鉄道に導入されたようですが、元来が研究目的の試作品なので、果たして実際どれくらい使用されたのかはわかっていません。
●帝室林野局の日本車輌製GL
日本製機関車製造銘板・番号集成(渡辺 肇)によれば日本車輌から1931(昭和6)年9月製造の4.5t機3台(製番12~14)が帝室林野局に納入されています。


木曽谷の森林鉄道(西 裕之)の内燃機関車一覧表でこれに該当しそうな機関車は以下の2台。
・旧番No.19→No.24 後にディーゼル化 1957野尻営林署で廃車
・旧番No.20→No.25 1956.1(木曽)福島営林署で廃車
1935(昭和10)年の作業軌道及森林鉄道に関する調査の件報告書(帝室林野局木曽支局)によれば三殿出張所に1台日車機(番号不明)が所属しており、購入価格は2,640円・・・酒井機が5,000円以上していることから見ればほぼ半額です!
藪原の川崎車輌機も2,960円と安値で、恐慌期で鉄道車両需要も減る中、産業用内燃機関車に新規参入するため、ダンピング価格を採ったのかも知れません。

代燃装置を併設した車もあり、代燃炉の準備と発車する様子が林野庁映像ライブラリの映像に残っていますが、何号機をどこで撮ったものかは不明です。
木馬、機関車(木曽御料林1937(昭和12年) 製作:帝室林野局)
日車製GLは2:39~3:16に登場
3台のうち1台が行方不明ですが1932(昭和7)年開設の名古屋支局大杉谷森林鉄道に木曽から機関車が来たという話があり、大杉谷下部軌道には大河内土工森林組合に同型の日車機がいました。木曽に入った3台のうち1台を大杉谷に持って行ったのかも知れません。
この機関車は1947(昭和22)年4月の林政統一で大杉谷が大阪営林局管轄となった後、1948(昭和23)年に同局尾鷲営林署に籍が移り大阪局6号機となったようです。
戦後は調子が悪く、カップリングギヤを使った機構が敬遠されてあまり使っていなかったようです。
木曽のNo.19、20も昭和30年代初頭には2台とも廃車されていますが、野尻営林署のNo.19はエンジンを三菱KE-5に乗せ換えディーゼル化、木曽福島署開田森林鉄道にいたNo.20はツートンカラー(上松色?)に塗られていたようです。


参考文献
木曽谷の森林鉄道(西 裕之/著 ネコ・パブリッシング/刊)
日車の車輌史 図面集-戦前産業車両/旧外地鉄道編(日本車両鉄道同好部/編著 鉄道史資料保存会/刊)
1935(昭和10)年の作業軌道及森林鉄道に関する調査の件報告書(帝室林野局木曽支局)
三重県の森林鉄道 ~知られざる東紀州の鉄道網(片岡 督・曽野 和郎/著)
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